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2013年11月

2013年11月21日 (木)

同族会社株式に対する相続税の納税猶予

★ 同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度とは

同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度は、正式には「非上場株式等についての相続税の納税猶予制度」といい、租税特別措置法第70条の7の2において規定されています。

この制度を一言に要約すると、後継者が相続によって取得した同族会社株式のうち、議決権総数の3分の2に達するまでの株式については、その80%に相当する相続税額が、後継者が死亡する時点まで納税猶予され、かつ、その時点で、猶予された税額の納付が免除される制度です。

言い換えれば、後継者が総議決権の100%に対する株式を持ち続けることを前提にすると、同族会社株式に対する53.3%(※)の相続税額の負担を避けることができ、

※ 2/3×80%=53.3%

後継者が総議決権の3分の2の株式を保有し続けることを前提にすると、同族会社株式に対する80%の相続税額の負担を避けることができます。

★ 適用例が少なかった理由

この制度は、平成21年度税制改正によって設けられ、平成20年10月1日以後に開始した相続に遡って適用されたもので、すでに5年が経過しているのですが、平成24年現在での適用総数は360件程度と非常に低く、この制度とともに設けられた贈与税の納税猶予制度に至っては170件弱に留まっているという状況でした。

その理由は、主に次のようなことが考えられます。

イ あらかじめ、先代経営者が相続開始前に経済産業局に出向いて、この制度を利用するための事前確認の手続を受けておかなければならないこと。

ロ この手続を受けてから5年間は、従業員数の8割以上を雇用し続けなければならないこと。

ハ 納税猶予の担保のために、その同族会社の株式を現物で提供しなければならず、株式を発行しない会社であっても、定款を株式発行会社に変更した上で、実際に株式を発行しなければならないこと。

ニ もし、延納の条件を満たさなくなった場合には、破産などの特別な場合を除き、2か月以内に利子税を含めて猶予税額を全額納付しなければならないこと。

ホ この制度に関係する省庁が経済産業省と財務省であるため、経済産業局と税務署とに同様の書類を提出して手続を行わなければならず煩雑であること。

★ 平成25年度税制による変更点

平成25年度税制改正によって、「使い勝手」がよくなるように、適用要件が次のように大幅に見直されました。

イ 従業員数の8割以上を5年間雇用し続ける要件を、5年間の平均で8割以上確保しなければならない要件に改められ、平均としての8割を欠いた場合でも、その下回った割合に応じた税額を納付するように改められる。

ロ 親族以外の従業員を後継者にした場合も、適用が可能になる。

ハ 納税猶予期間中における利子税率が2.1%から0.9%に引き下げられ、納税猶予期間が5年を超える場合には、当初の5年分に対する利子税が免除される。

ニ 民事再生計画等に基づいて事業を再出発させる場合は、猶予税額を再評価し、猶予税額の一部が免除される。

ホ 経済産業局と税務署に提出する資料の重複が排除される。

ヘ 株券不発行会社は、株式を発行していなくても担保提供が可能になる。

 納税猶予が取り消された場合で所定の場合には、延納または物納の適用が可能になる。

チ あらかじめ、先代経営者が相続開始前に経済産業局で行っておく事前確認の手続が不要とされた。

これらの変更点のうち、イ~トは平成27年1月1日以後に相続または遺贈によって取得する株式に適用されますが、チの事前確認制度はすでに平成25年4月1日以後に認定を受ける会社から廃止されています。

★ 事前確認制度の廃止によって生じる税理士事務所の責任

事前確認制度は、先代経営者があらかじめ生前に経済産業局で行っておく必要がありました。

つまり、先代経営者が自ら事前確認を受けていなかった場合には、そもそも納税猶予制度が適用できませんから、相続開始後に、この制度の適用を受けるかどうかを選択する余地はなかったわけです。

ところが事前確認制度が廃止されたことによって、納税猶予制度は誰でも要件を満たせば適用できるようになり、相続開始後に適用を受けるかどうかを選択できるようになりました。

しかしながら、この制度は他の制度と異なって、申告期限までに経済産業局と税務署とで次の処理をしておくことが必要です。

イ 相続開始後8か月以内に経済産業局で認定の手続を行い、認定を受けること。

ロ 相続税の申告書の提出期限までに、税務署で担保提供の手続を行うこと。

また、この制度は相続税の申告書を提出期限内に提出しなければなりません。

経済産業局での申請は、相続認定申請基準日が相続開始日から5か月を経過する日とされていますし、認定を受けないと相続税の期限内申告もできませんので、おおむね、次のように処理を進めていくことになると考えられます。

相続開始日

↓ 猶予額の概算を算出し、猶予を受けるかどうかを依頼者に確認する。

5か月目

↓ 経済産業局での認定手続

8か月目

↓ 税務署での担保提供手続

10か月目相続税の期限内申告

このなかで最も重要なのは、最初の段階での、納税猶予制度の適用を受けるかどうかの依頼者に対する確認でしょう。

ここでの確認が後手後手になったり、確認を怠ったりすると、後のスケジュールが非常に厳しくなりますし、本来の相続税の申告事務が最も集中する時期に重なりますので、非常にタイトな状況になると思われます。

同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度は、適用を受けるかどうかによる期限内納付額への影響が大きいため、依頼者の関心も高いと思われます。

そのことを考慮すると、本年4月から先行して実施された事前確認手続の廃止は、税理士事務所にとって見過ごすことのできない改正であると考えられます。

2013年11月15日 (金)

税務調査の現場ではいま「メール調査」が主流に

税務調査シーズン真っ盛りだが、調査の現場ではいま、メール調査が主流となっている。メール調査とは、税務調査に入った企業のパソコンから怪しいメール情報を抜き出して、申告漏れ等の端緒を掴む調査のことである。電子帳簿保存法を根拠とした足場の堅い調査手法で、近年の税務調査では欠かせない存在となっている。調査に当たっては、まず必要な情報を抽出するため、キーワードで怪しいメールを絞り込む。

使われるキーワードは、「売上」、「仕入」、「棚卸」、「現金」、「調整」、「口座」、「決算」、「報告」、「利益」、「税務」など。注文方法や店舗名、得意先名などもキーワードになる。こうして絞り込んだメールについて一つひとつ検討を開始。売上注文メールでは売上除外されたものはないか、受注確認メールでは振込先に簿外預金口座が記載されたものはないか、仕入発注メールでは除外された売上に対応するものはないかなどを見ていく。

会社のメールから把握できる情報は、顧客からの注文、事業者間取引の見積もりや受発注、請求書や納品書の添付、受領や支払いの確認、代表者等から社員等への業務指示、支店・工場等から本社への業務報告など多岐にわたる。メールにはかなりの情報が詰まっていることから、メール調査を足がかりとして大きな不正が見つかるケースは少なくない。業務用メールの管理は慎重に行う必要がありそうだ。

メール調査は根気の要る作業だが、メール調査を端緒として不正が発見されるケースは後を絶たない。例えば、海外法人を利用した架空手数料をメールから把握した事例がある。メール調査に国境はないため、海外支店や海外の取引先とのメールのやり取りも簡単に把握できる。近年、中小企業の海外進出が進む一方で、海外取引を利用した不正も増加傾向にある。メール調査は、経済取引の国際化にも対応できる有力な調査手法といえる。

電子メールから仕入先を利用した架空仕入を把握した事例もある。架空仕入れは帳簿上では読み取れなくても、電子メールのやり取りからその事実を把握できるケースは多い。電子メールを端緒に棚卸除外や架空給与を把握した事例も少なくない。特に棚卸除外は“使いやすい手口”といえる。決算期末の状況をみて動けるし、なにより取引先と通謀する必要がないというお手軽さがウケているのか、常に不正パターンの上位に入っている。

このほか、架空の覚書をプロパティの日付と電子メールにより裏付けた事例なども少なくない。キーワードで絞り込まれたメールをさらに精査することにより、数多くの不正があぶりだされる。この秋の税務調査シーズンでも、メール調査が盛んに行われているという。くれぐれも業務用メールの管理には注意したい。

提供:株式会社タックス・コム

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    新しい税法とか、忘れがちなこととか、何度も確認したいことを記載しています。ビギナーの方にも分かるように説明できることを心がけているつもりです。 自分のノート代わりですので、正確な情報ではない場合もあるかもしれません。説明不足のところがあったり、正確でないところがあったらご指摘くだされば幸いです。

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