1.賃貸用不動産の購入にあたり、売主に支払った固定資産税の精算金額
不動産売買の際に、その売買が行われた年度の固定資産税について、売主と買主の間でそれぞれの所有期間に応じて精算することが慣行として行われています。
ところで固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日における不動産の所有者とされており、年の中途で所有していた不動産を譲渡した場合であっても、その年度の固定資産税の納税義務者は1月1日現在の所有者である売主ということになります。
不動産の売買代金とは別に固定資産税の精算金額を支払ったとしても、このような金額の精算は不動産売買に対するひとつの条件にすぎず、不動産の購入代金の一部として支払われるものと考えられています。
したがって、不動産所得の計算上は必要経費に算入することはできず、購入した賃貸用不動産の取得価額に含めることとなります。
なお、売主が個人の場合、受取ったこの精算金額は不動産の譲渡代金に含めて譲渡所得の計算を行うことになります。
2.新たに賃貸用不動産を取得する際の借入金利息の取り扱い
たとえば、賃貸用アパートを新たに建築する場合、建築途中の段階では家賃収入が発生しないため、その借入金の利息は「収入を得るために直接要した費用」には該当せず、必要経費に算入することができないように思われます。
しかし、既に業務を営んでいる者が、業務用の固定資産を借入金により取得する場合、その利息は必要経費に算入できることとされています(所基通37-27)。
したがって、既に不動産の貸付業務を行っている者が、新たに賃貸用アパートを建築することはその業務の拡張行為であり、以前から所有しているものと新しく建築するものを区分して考える必要はなく、不動産所得の業務の遂行上生じたものとして、その借入金利息は必要経費に算入できることとなります。
なお、この場合であっても、新しいアパートの貸付業務の開始までの期間に対応する部分の利息については、その取得価額に算入することも可能です。
ただし、新たに不動産の貸付業務を開始する者が、その賃貸用不動産の取得資金を借入金により調達した場合の利息については、貸付業務の開始までの期間に対応する部分の金額は必要経費に算入することはできませんが、取得価額に算入することは認められていますのでご注意ください(同37-27(注)、38-8)。
3.土地建物を購入した後、その建物を取り壊した費用
新たに賃貸用建物を建築するために土地建物を購入し、売主との契約で買主である当方がその建物を取り壊す場合の費用について、たとえば、その建物がすでに老朽化していて利用できない状態であるケースや、取得した後おおむね1年以内にその建物の取り壊しに着手するケースなど、当初からその土地のみを利用する目的であることが明らかであるときには、その建物の取得に要した金額及び取り壊しに要した費用の額は、不動産所得の計算上必要経費に算入することはできず、土地の取得価額に加算する必要があります(所基通38-1)。
4.中古建物を取得した場合の耐用年数
業務用の中古資産を取得した場合、その資産に係る耐用年数は、合理的に見積もった残存耐用年数とされています(耐令3①一)。
ただし、支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額)の50%に相当する金額を超える場合などは、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります(耐通1-5-2、3)。
ところで、建物など個別の法定耐用年数が定められている資産で、残存耐用年数の見積りが困難な場合には、簡便法による算式により耐用年数を計算することが認められています(耐令3①二)。
この「残存耐用年数の見積りが困難な場合」とは、その見積りのために必要な資料がないために技術者等が積極的に特別の調査をしなければならない場合や、耐用年数の見積りに多額の費用を要する場合などとされています(耐通1-5-4)。
また、その中古資産の取得後に改良などのために支出した金額が、取得価額の50%を超える場合には、簡便法により使用可能期間を算出することはできません(耐通1-5-6)。
【簡便法】
1. 法定耐用年数の全部を経過したもの ⇒ 法定耐用年数×20%
2. 法定耐用年数の一部を経過したもの
⇒ (法定耐用年数‐経過年数)+経過年数×20%
この場合、計算した年数に1年未満の端数があるときにはその端数を切捨て、その年数が2年未満のときは2年とします。
たとえば、鉄筋コンクリート造(法定耐用年数47年)で建築後21年6ヶ月を経過した中古アパートを取得した場合、便法による建物の耐用年数は次のようになります。
(47年-21年6ヶ月)+21年6ヶ月×20%=(564ヶ月-258ヶ月)+258ヶ月×20%
=357.6月=29.8年 ∴29年(1年未満の端数切捨て)
なお、中古資産の耐用年数の計算は、その中古資産を業務の用に供した年に行うことができるものですから、その年にこの計算を行わずに、法定耐用年数で減価償却を行った場合などは、その翌年以降に耐用年数の計算をやり直すことはできませんのでご注意ください(耐通1-5-1)。
5.立退料の支払い
個人が支払う立退料については、それぞれのケースにより、税務上の取り扱いが異なりますので注意が必要です。
(1)賃貸用建物を建て替えるため、家主が借家人に支払う立退料
従前から所有している建物の借家人を立ち退かせるために支払う立退料は、その建物を取り壊してその敷地となっていた土地等を譲渡するために支出するものを除き、その支払いが確定した年分の不動産所得の計算上、必要経費に算入されます(所基通37-23)。
(2)賃貸用建物とその敷地を譲渡するため、売主が借家人に支払う立退料
建物の譲渡に際し支払う立退料や、建物を取り壊してその敷地となっていた土地を譲渡するために売主が支払う立退料は、不動産所得の必要経費に算入することはできず、譲渡所得の金額の計算上「譲渡に要した費用」として控除することになります(所基通33-7)。
(3)賃貸用建物とその敷地を取得するにあたり、買主が借家人に支払う立退料
土地や建物の取得に際して買主が借家人に支払う立退料は、不動産所得の必要経費に算入することはできず、その土地や建物の取得価額に算入されます(所基通38-11)。
提供:税経システム研究所
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