相続税

2019年12月12日 (木)

遺留分制度改正、代物弁済に注意!

 

2018年7月、約40年ぶりの民法改正により相続法が大きく変わった。このうち遺留分制度改正が今年7月1日に施行されているが、施行後5ヵ月が経過した今、改正遺留分制度についての注意点がクローズアップされ、遺留分制度の改正の税金への影響に関心が寄せられている。遺留分とは、相続人が請求できる最低保証額のこと。例えば、遺言により相続財産を全く貰えない場合でも遺留分だけは保証されている。

遺留分は法定相続分の2分の1(直系尊属のみが相続人である場合は3分の1)だ。この遺留分制度については、従来は遺留分について相続財産(物)を直接返還することが原則だった。改正前は、遺留分の対象となる財産が不動産のみの場合、不動産が共有名義となり、相続後の不動産の運営、処分などに支障が出るおそれがあった。不動産が共有状態になると、事業承継にも支障となるケースも多かった。

そこで、改正後は、遺留分侵害額に相当する金額は、原則「金銭」で請求をすることとなった。このため、共有名義を回避できるようになったわけだ。ただし、代物弁済には注意が必要となる。遺留分侵害額に相当する金額を請求された際に、金銭による支払いができない場合、金銭に代えて不動産の持ち分を渡すと、民法上の「代物弁済」にあたる。代物弁済は税務上、不動産の持ち分を譲渡(売却)したものと考える。

 つまり、例えば5000万円の遺留分を金銭ではなく不動産で支払った場合、「不動産を5000万円で売却し、その代金5000万円を請求者に渡した」と考える。そして請求者はその5000万円で改めて不動産を購入したものと考えることになるというわけだ。代物弁済すると、譲渡所得による所得税・住民税が課税される可能性があるため、代物弁済には慎重な対応が必要となる。

なお、今回の改正では、生前贈与について持ち戻す期間を相続開始前の10年間に限定された。改正前は、遺留分の基礎財産に含める贈与の期間制限はなく、時期を問わず遺留分算定の基礎となる財産の価額に含めるとされていた。改正法では、相続人に対する贈与は相続開始前の10年間にされたものに限定し、相続人に対し、相続開始より10年以上前に贈与された財産は、遺留分を算定するための財産の価額に含まれないこととされている。


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2019年6月11日 (火)

民法改正による特別の寄与料の取扱い

  今回の民法(相続法)改正によって、被相続人に対して無償で療養看護等の役務提供をした親族(相続人等を除く)が、相続人に対して寄与に応じた金銭の請求をすることができるものとする「特別の寄与」(民1050条)の制度が新設された。(令和元年7月1日施行)

従来の相続では、たとえば相続人の配偶者が被相続人の看護等に従事貢献したとしても、その配偶者に財産を分与するには、報酬の支払い、遺贈、養子縁組などの手順が必要とされていた。しかし、これらの法的行為を当該配偶者側から被相続人らに要求することは状況的に困難と考えられ、本規定はそうした不公平を是正するために設けられたとされる。

  特別寄与料の支払いが確定した場合、相続人は法定相続分又は指定相続分にしたがって支払いをすることになり、その寄与料は、税制上次のように取り扱われることになる。(平成31年税制改正大綱より)

① 特別寄与者は、特別寄与料の額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税を課する。(※)

② 特別寄与者は、①の事由を知った日から10カ月以内に相続税の申告書を提出しなければならない。

③ 相続人が支払うべき特別寄与料の額は相続税の課税価格から控除する。


④ 相続における更正の請求の特則等に①の事由を加える。


※ 一親等血族及び配偶者以外の者への相続課税であることから、二割加算(相法18条)の対象となるとみられる。


まだ相続税法による詳細な対応は明らかにされていないが、特別寄与者や相続人へのこうした対応は妥当といえるし、課税の逋脱も生じにくいと思われるが、他にも、相続税額が生じないケース等についても検討をしておく必要がある。


例えば、課税財産が少額、あるいは小規模宅地の特例等の適用により基礎控除額以下となる場合などにおいて、故意に特別の寄与料の発生をさせることが出来たとしたら、相続財産を相続人以外に提供することも可能となる。特別の寄与者は「親族」であれば該当できるため、被相続人の孫からの特別寄与料の請求が認められれば、部分的に相続を一代飛ばすこともできる。


特別の寄与に限らず、民法改正によって起こりうる状況はまだ予見しきれていない。税務関係者はあらゆる事態を想定して、課税の対応を準備すべきことになる。


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2019年6月 4日 (火)

飛躍的な増加が期待される「法人向け事業承継税制

 

事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「法人向け事業承継税制」は、2018年度の税制改正で抜本的に拡充された。中小企業庁によると、拡充前は、年間400件程度の申請だったが、拡充後は、足元(本年2月現在)の申請件数は年間6000件に迫る勢いであり、爆発的に伸びている。今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万が後継者未定という。

こうしたなか、事業承継税制による中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継が期待されている。2018年度税制改正では、10年間(2018年1月1日から2027年12月31日)の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われた。基本は、2018年4月1日から2023年3月31日までの5年間以内に承継計画を作成して都道府県に提出した会社(「特例認定承継会社」)が、贈与・相続による事業承継を行う場合に適用される。


事業承継税制の抜本拡充の概要は、(1)対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能にし、納税猶予割合も100%に拡大することで承継時の税負担ゼロになる。(2)親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象にする。(3)承継後年間平均8割以上の雇用維持要件を未達成の場合でも、猶予を継続可能に。(4)売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免する。


旧制度では、経営承継期間中、後継者が自社株式を譲渡した場合や、会社を譲渡・合併・解散した場合には、納税猶予税額を全額納付する必要があった。しかし、改正後は、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、承継期間経過後に、会社の非上場株式の譲渡や合併による消滅、会社を解散するときは、その時点での株式評価額で税額を再計算して一定範囲で猶予税額を減免する。後継者の将来リスクの軽減が期待できるわけだ。


上記の「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字の場合や売上高がその年の前年の売上高に比べて減少している場合、直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上ある場合、などをいうこととされている。


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2018年9月24日 (月)

相続法改正で自筆証書遺言の利便性が格段に向上


                                                                                                                                                                                         

 

                              
                                                             
                                                                                                 
                                 

今国会において、民法中の相続に関する規定等を改正する法律案が去る7月6日、参議院で可決・成立した。今回の相続法分野に関する改正は、約40年ぶりの大きな見直しとも言われており、実務への影響を与えることは必至。特に、近年静かなブームを迎えていると言われる“終活”の根幹である遺言書作成の実務には、大きな影響を与えるとみられている。主な改正点は、(1)自筆証書遺言の方式緩和、(2)自筆証書遺言の保管制度の創設だ。

 

現行制度では、自筆証書遺言を作成する場合は財産目録を含めた全ての記載を全文自書する必要があり、特に財産が多数ある場合は相当な負担となる。また、代筆やパソコン等でタイプしたものを印刷した文書は有効にならず、さらに、文書を修正する場合は、変更する場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印しなければ効力を生じない。高齢者には作成の負担が大きいばかりか、記載ミスが起こりやすいとの指摘がある。

 

そこで改正民法では、財産目録の部分については自書する必要はなく、パソコン等で作成してもよいとされた。ただし、自書していない財産目録については、作成したその全ページに署名及び押印が必要となる。また、財産目録が変更された場合は、別紙として添付していた財産目録を削除し、修正した新しい財産目録を添付する方法で加除訂正を行うことが認められる。ただし、ここでもその全ページに署名及び押印が必要となる。

 

自筆証書遺言の保管については、そのほとんどが遺言者自身の家や金庫等で保管されているため、遺言書が発見されなかったり、紛失や偽造・変造のリスクがあることから、遺言者の死後、別の遺言書の存在や遺言書の偽造・変造等を理由に、相続人間で紛争を引き起こしてしまうことも多い。そこで改正民法では、自筆証書遺言を、公的機関である法務局に保管する制度を設けることで、速やかに遺言の有無と内容の確認ができるようになる。

 

そのほか、検認手続きの省略がある。検認手続きとは、家庭裁判所が相続人立会いの下で、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することをいう。後日偽造や変造ができないように内容を明確にすることを目的とした手続きだ。現行では、自筆証書遺言が発見されたときに、家庭裁判所による検認手続きが必要だが、改正後は、法務局に保管された自筆証書遺言については、偽造等のおそれがないことから、家庭裁判所による検認手続きは不要となる。

                                                                    

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2018年6月 7日 (木)

法定相続情報一覧図作成上の注意点

 

                              

                                                             
                               

平成30年度税制改正により、相続税の申告書の添付書類の範囲の改正が行われました。

 

改正前は「戸籍謄本」で被相続人のすべての相続人を明らかにするものの添付が必要でしたが、平成30年4月1日以後は、加えて「法定相続情報一覧図の写し」や、それらの書類のコピーの添付も認められることになりました。

 

ただし、「法定相続情報一覧図の写し」を添付する場合には、いくつかの注意点がありますので確認していきたいと思います。

 

1.法定相続情報証明制度の概要

 

不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、所有権の移転の登記(相続登記)が必要となりますが、近年、相続登記が未了のまま放置されている不動産が増加し、これがいわゆる所有者不明土地問題や空き家問題の一因となっていました。

 

そこで法務省において、相続登記を促進するため「法定相続情報証明制度」が新設され、平成29年5月29日から運用が行われていました。

 

相続人は法務局(登記所)に対し、 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等とともに、それらの記載に基づく法定相続情報一覧図(被相続人の氏名・最後の住所・最後の本籍・生年月日及び死亡年月日並びに相続人の氏名・住所・生年月日及び続柄の情報)などの必要書類を提出し、登記官がその内容を確認して認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」を交付します。

 

その申出をすることができるのは被相続人の相続人とされていますが、法定代理人のほか、民法上の親族、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士も代理人となることができます。

 

また、申出をすることができる登記所は、①被相続人の本籍地、②被相続人の最後の住所地、③申出人の住所地、④被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所のいずれかとされていますが、郵送によることも認められています。

 

交付された「法定相続情報一覧図の写し」が、相続登記の申請手続をはじめ、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続に利用されることで、相続手続に係る相続人・手続の担当部署双方の負担が軽減されます。

 

一覧図の写しは相続手続に必要な範囲で複数通発行可能であり、法定相続情報一覧図の保管期間中(5年間)は再交付することも可能です。

 

ただし、再交付の申出をすることができるのは当初一覧図の保管等申出をした申出人に限られており、他の相続人が再交付を希望する場合は、当初の申出人からの委任が必要となります。

 

なお、主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例は法務局のホームページ

 

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html)で確認することができます。

 

2.相続税の申告書の添付書類としての法定相続情報一覧図作成上の注意点

 

国税庁は、本年4月に相続税の申告書の添付書類の範囲についてのリーフレットを公表しました

 

(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/h30kaisei.pdf)。

 

その中において、「法定相続情報一覧図の写し」を添付する場合の注意点が記載されています。

 

(1)様式について

 

「法定相続情報一覧図の写し」は、図形式のほか、被相続人及び相続人を単に列挙する形式(列挙形式)により作成することが可能です。

 

しかし、列挙形式では相続人の法定相続分が確認できないケースも生じるため、申告書の添付書類として利用する場合は、図形式のものに限られることになります。

 

(2)続柄の記載について

 

相続人である子の続柄については、単に「子」と記載されているだけでは実子または養子のいずれであるかがわからないため、申告書の添付書類として利用できないことになります。

 

戸籍上の続柄(長男・長女・養子など)により記載されている必要があります。

 

なお、被相続人に養子がいる場合、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー可)の添付も必要となりますのでご注意ください。

                                                                 

提供:税経システム研究所

2018年5月21日 (月)

一定額を超える弔慰金は退職手当等として課税対象に


                                                                                                                                                                                         

 

                              
                                 

被相続人が生前に勤めていた会社から相続人が受け取る金銭のうち、死亡退職金は相続税の課税対象になる一方、弔慰金は課税されない。弔慰金は、香典や花輪代、葬祭料といった名目で支払われることもあるが、税務上、社会通念上相当と認められるものは所得税や贈与税が課税されないことになっている。そこで、判断に迷うのは「社会通念上相当と認められる金額」の範囲である。

 

相続税基本通達(3-20)では、亡くなった従業員に支給されるべきだった退職手当金や功労金など、その名義のいかんにかかわらず実質上退職手当金等に該当するものを除き、弔慰金として取り扱うこととしている。具体的には、業務上死亡の場合には賞与以外の普通給与額の3年分相当額を、また、業務上の死亡でない場合には、普通給与額の半年分相当額を、非課税となる弔慰金として取り扱うことを定めている。

 

この範囲を超える部分は、相続税の課税対象となる退職手当金等として取り扱うこととしている。仮に、その通達により弔慰金として取り扱われたもののなかに、社会通念上相当と認められる額を超える部分があるとすれば、本来、その部分は退職手当金等として取り扱うべきであり、その通達により弔慰金として取り扱ったものについては、社会通念上相当と認められる範囲内のものである、というのが国税当局の考え方である。

 

つまり、弔慰金は、原則として社会通念上という国民感情の観点から課税の対象とはならないことになっているが、課税されないことを利用して節税として使われることがある。そこで、弔慰金として妥当と判断できる一定の金額は課税せず、超えた部分は過度な弔慰金と判断して、課税対象にしている。そして、弔慰金は従業員の死亡退職に伴い会社から支払われるため、退職手当金等として相続税の課税対象となるわけだ。

 

なお、上記の「業務上の死亡」とは、被相続人が亡くなった原因が業務中に起こったことであり、業務と関係性が深い原因がある場合には業務上の死亡と判断される。例えば、業務遂行中に発生した事故等により亡くなった場合や、出張中に発生した事故等で亡くなった場合、仕事が原因とされる職業病によって亡くなった場合などが該当する。また、通勤途中の災害についても業務上の死亡と判断される。

                                                                    

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2018年4月26日 (木)

4月以後から広がる相続税申告書の添付書類の範囲

 

                              
2018/04/24
                                                             
                                                                                                 
                                 

2018年度税制改正に伴い、相続税申告の添付書類についての改正が行われ、相続税法施行規則の改正により、2018年4月1日以後に提出する申告書から、法務省が行っている「法定相続情報証明制度」で取得が可能な「法定相続情報一覧図」についても、一定の条件をもとに添付書類として認められる。これまで、相続税の申告書には、(1)「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするものを添付しなければならないこととされていた。

 

しかし、4月1日以後は、(1)の書類に代えて、(2)図形式の「法定相続情報一覧図の写し」(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限る)、(3)(1)又は(2)をコピー機で複写したもの、のいずれかの書類を添付することができるようになった。被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものも含む)の添付も必要となる。

 

「法定相続情報一覧図の写し」とは、相続登記の促進を目的として、2017年5月から全国の法務局で運用を開始した「法定相続情報証明制度」を利用することで交付を受けることができる証明書のことで、戸籍に基づいて、法定相続人が誰であるかを登記官が証明したもの。相続手続きは、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍関係の書類等一式を何度も出し直す必要がなくなった。

 

今まで、相続人は、遺産(不動産や預貯金等)に係る相続手続きに際し、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係の書類等一式を全て揃えた上で、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関など、相続手続きを取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があった。法定相続情報一覧図の写しは、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人・手続きの担当部署双方の負担の軽減が期待されている。

 

なお、法定相続情報一覧図の写しは、相続人等が、亡くなった人の本籍地・最後の住所地、申出人(相続人等)の住所地などを管轄する法務局のいずれかで、必要種類と合わせて申出をすることで、無料で交付を受けられる。申出の手続きは、相続人のほか、法定代理人、民法上の親族、資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士に限る)が代理をすることができる。

                                                                    

この件については↓
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/h30kaisei.pdf

                                                                    

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2018年1月25日 (木)

法定相続人と相続人とで異なる相続税法上の取扱い


                                                                                                                                                                                         

 

                              
2018/01/24 著者 :  尾崎三郎
                                                             
                               

相続税の取り扱いにおいて「法定相続人」と「相続人」とで取り扱いを異にしている事項があるので、それについて次の〔設例〕に基づいて説明する。

 

〔設例〕

 

 
                                 

備考1 被相続人Aには妻も子もいない。

                                                                    

2 父甲は、被相続人Aが保険料の全額を負担していた生命保険契約の死亡保険金を取得しているが、正式に家庭裁判所に申述して相続を放棄している。

                                                                    

3 妹Bも上記の死亡保険金を取得している。また、妹Bは障害者である。

                                                                    

4 弟Cは未成年者(20歳来満)である。

                                  
 

1 生命保険金の課税(非課税の適用と非課税限度額の計算)

 

(1)父甲は民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人であり法定相続人であるが、相続を放棄しているので相続人には該当しないため、取得した保険金は遺贈により取得したものとみなされ、非課税の規定(相法12①五)は適用されない。

 

(2)妹B及び弟Cは、先順位の相続人である父甲が相続を放棄したため、兄弟姉妹として相続人となるので、取得した保険金は相続により取得したものとみなされて非課税の規定の適用を受けることができる。

 

(3)生命保険金の非課税限度額の計算における500万円に乗じる相続人の数は、相続税法第15条第2項〔遺産に係る基礎控除〕に規定する相続人(いわゆる法定相続人)の数とされているので、法定相続人である父甲1人で500万円となる。

 

参考 退職手当金の場合も同様である。

 

2 遺産に係る基礎控除

 

遺産に係る基礎控除額を計算する場合の600万円に乗じる相続人の数については法定相続人の数とされていることから、相続人妹B及び弟Cの2人ではなく父甲1人で、3,000万円+600万円×1=3,600万円となる。

 

3 相続税の総額の計算

 

相続税の総額の計算においても、法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとした揚合の各取得金額とされているので、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額のすべてを法定相続人である父甲1人が取得したものとして税率を適用することになる。

 

4 未成年者控除

 

相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人の法定相続人に該当することが要件の一つとされていることから、相続人であるが法定相続人でない弟Cは適用を受けることができない。

 

5 障害者控除

 

障害者控除についても法定相続人であることが要件の一つとされていることから、妹Bは適用を受けることができない。

 

6 相続税額の加算

 

相続税額の2割加算の規定は相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人の1親等の血族及び配偶者以外の揚合に適用があるので、2親等の血族である兄弟姉妹が法定相続人である相続人の場合でも適用がある。また、1親等の血族である者が相続を放棄している場合で遺贈により財産を取得しても適用はない。なお、1親等の血族が死亡していて代襲相続人となった直系卑属(孫やひ孫)は1親等の血族に含められ適用はない。また、被相続人の直系卑属が養子となっている場合は、その養子については代襲相続人となっているときを除き1親等の血族に含まないものとされ適用を受けることになる。

                                                                 

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2017年8月 1日 (火)

私道の評価

<財産評価、相続税>

                                                                 
                                 

財産評価基本通達24(私道の用に供されている宅地の評価)に定める「私道」については、道路としての利用状況や、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益をすることに制約が存すること等の事実関係に照らして判断しているところだが、国税庁はこのほど、さきの最高裁判決(2016年(行ヒ)第169号)を受けて、「私道」の評価に関する今後の統一的取扱いをホームページ上で示した。

 

具体的には、今年2月28日の最高裁判決を踏まえ、(1)都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、(2)道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、(3)居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、評価通達24に基づいて評価することとした。

 

財産評価基本通達24では、私道の用に供されている宅地の価額は自用地の30%で評価、私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは評価しないこととされている。しかし、実務上ではゼロ評価となる私道の範囲は限定的に解釈されておりトラブルとなるケースが多かった。こうしたなか、「歩道状空地」の評価をめぐり争われていた裁判で、最高裁が国税側の主張を認めた二審判決を破棄。高裁に差し戻し現在に至っている。

 

国税庁は、今回示した取扱いは過去に遡って適用されるので、これにより、過去の相続税・贈与税の申告内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、所轄の税務署に更正の請求をすることで、その納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができるとしている。なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされているので注意が必要だ。

 

この件については↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h29/takuchi/index.htm

                                                                    

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2016年11月14日 (月)

贈与と贈与税

   当事者間で贈与の意思がなくても贈与税がかかることがあります。住宅を新築して資金は父親が出したのに、息子の名前で登記したとか、息子が父親からお金を借りて「あるとき払いの催促なし」とか「出世払い」にしたというようなときは贈与とみられます。

1.贈与

個人が個人から財産の贈与を受けた場合、財産の贈与を受けた個人に贈与税がかかります。贈与税は財産の贈与を受けた場合に限らず、次のような場合も課税されます。

① 借金を免除や肩代わりしてもらった場合

② 著しく低い金額で財産を取得した場合

③ 保険料を自分以外の人が負担していた生命保険の満期金をもらった場合

④ 保険料を被相続人・自分以外の人が負担していた生命保険の死亡保険金をもらった場合

⑤ その他経済的な利益を受けた場合

2.贈与税がかからないケース

贈与により財産を取得しても次のような場合には贈与税は課税されません。

① 扶養義務者から生活費や教育費として贈与されたうち、通常必要なもの

② 社交上必要な香典、祝金、見舞金等

③ 離婚に際しての財産分与その他

④ 法人から贈与された場合(一時所得として所得税が課税される)

3.注意点

① 相続税の申告のときに、子供や配偶者の名義の預金が、亡くなった父親(夫)のものではないかとトラブルになることがあります。つまり、子供の名義の預金でも、それが父親から以前に贈与されたものなのか、それとも単に子供の名義を借りただけのものなのかということです。単に名義を借りただけということであれば、その子供名義の預金は亡くなった父親のものとして相続税の対象となります。

贈与とは他人に無償で財産を与える契約で贈与する者(贈与者)と贈与を受ける者(受贈者)の合意が必要です。

贈与した預金の通帳も印鑑も父親がもっているというのでは贈与したことになりません。贈与契約書などを作成して父親の通帳から子供の通帳へ贈与する金額を振り込み、通帳も印鑑も子供が管理し、なるべく110万円を超える贈与をして贈与税の申告を税務署に提出しておきます。

② 「現金1,100万円の贈与を10年に分けてする」のと「1年目110万円を贈与、2年目110万円の贈与、3年目110万円の贈与・・・10年たったら1,100万円贈与していた」というのとは話が違ってしまいます。つまり前者のケースでは、「最初の年に1,100万円の贈与があった」と認定されて高い贈与税を納めることになってしまいます。贈与することが、その年に決まったということが説明できるように、毎年贈与契約書などを作成する、毎年贈与の時期をずらす、金額を変える、贈与する物を変えるなどしておくと無用のトラブルを避けられます。

③ 住宅新築資金を父親が出したのに、子供の名前で登記したとか、子供名義で登記された家屋に父親が増改築をしたような場合には、贈与とされ贈与税が課税されます。また、マイホームの購入に充てるために、子供が父親からお金を借りた際、「あるとき払いの催促なし」とか「出世払い」にしたというようなときは贈与とみられます。親子間でも金銭消費貸借契約書を取り交わし、キチンと毎月返済し、返済を銀行振込みにするなどしておくと無用のトラブルを避けられます。

④ 相続開始前3年内に行われた贈与は相続税の対象となります。

⑤ 親子間で土地の貸し借りをする場合に、通常は権利金を支払う地域で権利金のやり取りがなくても、地代が無償または固定資産税相当額以下(使用貸借の場合)のときは贈与とはされません。しかし、権利金を支払わずに、通常の地代を支払っていると、借地権が贈与されたとして贈与税が課税されます。

提供:税経システム研究所

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