相続税

2017年8月 1日 (火)

私道の評価

<財産評価、相続税>

                                                                 
                                 

財産評価基本通達24(私道の用に供されている宅地の評価)に定める「私道」については、道路としての利用状況や、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益をすることに制約が存すること等の事実関係に照らして判断しているところだが、国税庁はこのほど、さきの最高裁判決(2016年(行ヒ)第169号)を受けて、「私道」の評価に関する今後の統一的取扱いをホームページ上で示した。

 

具体的には、今年2月28日の最高裁判決を踏まえ、(1)都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、(2)道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、(3)居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、評価通達24に基づいて評価することとした。

 

財産評価基本通達24では、私道の用に供されている宅地の価額は自用地の30%で評価、私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは評価しないこととされている。しかし、実務上ではゼロ評価となる私道の範囲は限定的に解釈されておりトラブルとなるケースが多かった。こうしたなか、「歩道状空地」の評価をめぐり争われていた裁判で、最高裁が国税側の主張を認めた二審判決を破棄。高裁に差し戻し現在に至っている。

 

国税庁は、今回示した取扱いは過去に遡って適用されるので、これにより、過去の相続税・贈与税の申告内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、所轄の税務署に更正の請求をすることで、その納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができるとしている。なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされているので注意が必要だ。

 

この件については↓
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h29/takuchi/index.htm

                                                                    

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2016年11月14日 (月)

贈与と贈与税

   当事者間で贈与の意思がなくても贈与税がかかることがあります。住宅を新築して資金は父親が出したのに、息子の名前で登記したとか、息子が父親からお金を借りて「あるとき払いの催促なし」とか「出世払い」にしたというようなときは贈与とみられます。

1.贈与

個人が個人から財産の贈与を受けた場合、財産の贈与を受けた個人に贈与税がかかります。贈与税は財産の贈与を受けた場合に限らず、次のような場合も課税されます。

① 借金を免除や肩代わりしてもらった場合

② 著しく低い金額で財産を取得した場合

③ 保険料を自分以外の人が負担していた生命保険の満期金をもらった場合

④ 保険料を被相続人・自分以外の人が負担していた生命保険の死亡保険金をもらった場合

⑤ その他経済的な利益を受けた場合

2.贈与税がかからないケース

贈与により財産を取得しても次のような場合には贈与税は課税されません。

① 扶養義務者から生活費や教育費として贈与されたうち、通常必要なもの

② 社交上必要な香典、祝金、見舞金等

③ 離婚に際しての財産分与その他

④ 法人から贈与された場合(一時所得として所得税が課税される)

3.注意点

① 相続税の申告のときに、子供や配偶者の名義の預金が、亡くなった父親(夫)のものではないかとトラブルになることがあります。つまり、子供の名義の預金でも、それが父親から以前に贈与されたものなのか、それとも単に子供の名義を借りただけのものなのかということです。単に名義を借りただけということであれば、その子供名義の預金は亡くなった父親のものとして相続税の対象となります。

贈与とは他人に無償で財産を与える契約で贈与する者(贈与者)と贈与を受ける者(受贈者)の合意が必要です。

贈与した預金の通帳も印鑑も父親がもっているというのでは贈与したことになりません。贈与契約書などを作成して父親の通帳から子供の通帳へ贈与する金額を振り込み、通帳も印鑑も子供が管理し、なるべく110万円を超える贈与をして贈与税の申告を税務署に提出しておきます。

② 「現金1,100万円の贈与を10年に分けてする」のと「1年目110万円を贈与、2年目110万円の贈与、3年目110万円の贈与・・・10年たったら1,100万円贈与していた」というのとは話が違ってしまいます。つまり前者のケースでは、「最初の年に1,100万円の贈与があった」と認定されて高い贈与税を納めることになってしまいます。贈与することが、その年に決まったということが説明できるように、毎年贈与契約書などを作成する、毎年贈与の時期をずらす、金額を変える、贈与する物を変えるなどしておくと無用のトラブルを避けられます。

③ 住宅新築資金を父親が出したのに、子供の名前で登記したとか、子供名義で登記された家屋に父親が増改築をしたような場合には、贈与とされ贈与税が課税されます。また、マイホームの購入に充てるために、子供が父親からお金を借りた際、「あるとき払いの催促なし」とか「出世払い」にしたというようなときは贈与とみられます。親子間でも金銭消費貸借契約書を取り交わし、キチンと毎月返済し、返済を銀行振込みにするなどしておくと無用のトラブルを避けられます。

④ 相続開始前3年内に行われた贈与は相続税の対象となります。

⑤ 親子間で土地の貸し借りをする場合に、通常は権利金を支払う地域で権利金のやり取りがなくても、地代が無償または固定資産税相当額以下(使用貸借の場合)のときは贈与とはされません。しかし、権利金を支払わずに、通常の地代を支払っていると、借地権が贈与されたとして贈与税が課税されます。

提供:税経システム研究所

2016年10月18日 (火)

庭先部分のみの相続でも小規模宅地等の特例認める

  関東信越国税局はこのほど、文書回答で、小規模宅地等の特例について、家屋部分を含めた敷地ではなく敷地の一部のみ相続した場合でも、特例を適用できるケースがあることを明らかにした。この事案は、被相続人が住んでいた家屋の敷地(家屋の部分と庭先部分の二筆)について、被相続人とともにその家屋に住んでいた甲(被相続人の実子)が庭先部分の土地を、乙(甲の子供で被相続人の養子)が家屋部分を含めた土地を相続したもの。

そこで、相続後も甲が引き続きその家屋に住むこととなっている場合に、甲が取得した庭先部分の土地に小規模宅地等の特例を適用できるか否かという事前照会である。相続により取得する庭先部分の土地も被相続人の居住の用に供されていた敷地ではあるが、居住家屋に付属している庭先部分の土地の上には家屋がなく土地のみを処分することが可能であるため、小規模宅地等の特例の趣旨に照らして適用対象外となるとの疑問が生じる。

それは、同特例の趣旨が、「被相続人等の居住の用に供されていた小規模な宅地等については、一般に、それが相続人等の生活基盤の維持のために欠くことのできないもので、相続人が居住の用を廃してこれを処分することについて相当の制約を受けるのが通常だから、相続税の課税価格に算入すべき価額を計算する上で、政策的な観点から一定の減額をすることとした」(東京地裁2011年8月26日判決等)ことにあると解されているからだ。

これについて関東信越国税局は、しかしながら、甲の庭先部分の土地及び乙が家屋とともに取得した土地は、一体として「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」であることからすると、庭先部分の土地は、「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」であると指摘。

また、相続人甲は、被相続人の親族であり、「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者」に該当する。したがって、相続人甲が庭先部分の土地を相続により取得し、申告期限まで引き続き庭先部分の土地を有し、かつ、家屋に居住している場合には、庭先部分の土地は、「特定居住用宅地等」として、小規模宅地等の特例の対象になるとの判断を示している。

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2016年9月14日 (水)

相続税・贈与税の申告に係るマイナンバー記載の留意点

1 相続税・贈与税の申告に係るマイナンバーの記載

平成28年1月1日以降の相続等により取得した財産に係る相続税の申告書の提出及び平成28年分の贈与税の申告書の提出から、マイナンバー(個人番号)の記載が必要になる。

本稿では、相続税・贈与税の申告に係るマイナンバー記載の留意点について、「国税分野における社会保障・税番号制度導入に伴う各種様式の変更点:平成28年7月 国税庁」及び「相続税・贈与税に関するFAQ:国税庁(以下「FAQ」とする)」を基にして確認を行う。

2 相続税の申告に係るマイナンバー記載の留意点

(1) マイナンバー記載のポイント

平成28年1月1日以降の相続又は遺贈により取得した財産に係る申告書から、被相続人のマイナンバー及び財産を取得した者のマイナンバー又は法人番号を記載して、所轄税務署長に提出することになった(マイナンバーを記載する場合は、先頭の1マスを空欄にして、右詰めで記載する)。

財産を取得した者が個人の場合には、番号法で定める本人確認のため、次のいずれかの書類を添付しなければならない。

・財産を取得した者のマイナンバーカードの写し

・財産を取得した者の通知カードの写し及び運転免許証等の写真付身分証明書の写し

なお、財産を取得した者が人格のない社団又は財産等の場合には、上記書類の添付は不要である。

(2) マイナンバー記載の留意点

相続税の申告に係るマイナンバー記載の留意点は、以下のようになる。

① 被相続人のマイナンバーが確認できない場合

被相続人のマイナンバーカード(個人番号カード)などからマイナンバー(個人番号)を確認することができない場合には、被相続人のマイナンバーを記載せずに相続税の申告書を提出して差し支えない(FAQ1-2)。

② 被相続人の本人確認書類の提示又は写しの添付の必要性

被相続人のマイナンバーは、本人確認の措置の規定(番号法第16条)の適用がないため、被相続人の本人確認書類の提示又は写しの添付は不要である(FAQ1-3)。

③ 相続税の申告書には複数の相続人等が同一の書面にマイナンバーを記載することになるが、例えば、一人目の相続人等が自らのマイナンバーを相続税の申告書に記載して二人目の相続人等に渡す行為は、番号法上の「特定個人情報の提供」に該当するか

相続税の申告書の作成に当たり、複数の相続人等がそれぞれのマイナンバーを記載するために、一の相続人等が相続税の申告書にマイナンバーを記載してその他の相続人等に渡す行為は、番号法上の特定個人情報の提供には該当しない。

また、相続人等の間での本人確認は不要である。

なお、マイナンバーを記載した相続税の申告書を税務署に提出する際は、各相続人等の本人確認書類の写しを添付する必要がある(各相続人等のうち税務署の窓口で相続税の申告書を提出する者は、本人確認書類の写しの添付に代えて、本人確認書類を提示してもよい)(FAQ1-4)。

④ 住民票の写し(マイナンバーが記載されているもの)を番号確認書類として提出できるか

住民票の写しに同一世帯の者に係るマイナンバーが記載されている場合には、相続税の申告をする者以外の者のマイナンバーをマスキングするなどの対応が必要になる(FAQ1-5)。

⑤ 相続税の申告書の控えを保管するに当たっての留意点

マイナンバーは、番号法で規定する場合以外は、他人のマイナンバーを収集又は保管することができないことから、他の相続人等のマイナンバーが記載された状態で相続税の申告書の控えを保管することはできない。

したがって、相続税の申告書の控えを保管する場合は、その控えにはマイナンバーを記載しない(複写により控えを作成する場合は、マイナンバー部分が複写されない措置を講じる)など、マイナンバーの取扱いには留意する必要がある(FAQ1-6)。

⑥ 相続税の申告書に法人番号を記載する必要があるのはどのような場合か

例えば、人格のない社団又は財団が財産を取得した場合で、当該社団又は財団が法人番号の指定・通知を受けているときに、法人番号の記載が必要になる(FAQ1-7)。

3 贈与税の申告に係るマイナンバー記載の留意点

(1) マイナンバー記載のポイント

平成28年分の贈与税の申告書(一般的に平成29年2月1日から3月15日までの間に提出)から、納税者のマイナンバー又は法人番号を記載して、所轄税務署長に提出することになった(マイナンバーを記載する場合は、先頭の1マスを空欄にして、右詰めで記載する)。

納税者が個人の場合には、番号法で定める本人確認のため、次のいずれかの書類を添付しなければならない。

・納税者のマイナンバーカードの写し

・納税者の通知カードの写し及び運転免許証等の写真付身分証明書の写し

なお、納税者が人格のない社団又は財産等の場合には、上記書類の添付は不要である。

(2) マイナンバー記載の留意点

贈与税の申告に係るマイナンバー記載の留意点は、以下のようになる。

① 住民票の写し(マイナンバーが記載されているもの)を番号確認書類として提出できるか

住民票の写しに同一世帯の者のマイナンバーが記載されている場合には、贈与税の申告をする者以外の者のマイナンバーをマスキングするなどの対応が必要になる(FAQ2-2)。

② 贈与税の申告書の控えを保管するに当たっての留意点

マイナンバーが記載された書類を保管することは、マイナンバーの漏えいのリスクを伴うことから、その控えにはマイナンバーを記載しないようにする(FAQ2-3)。

③ 贈与税の申告書に贈与者のマイナンバーを記載する必要があるか

マイナンバーの記載が必要な者は、贈与税の申告をする者(財産の贈与を受けた者)になるため、贈与者のマイナンバーを贈与税の申告書に記載する必要はない。

また、誤って記載した場合には、贈与者のマイナンバーをマスキングするなどした上で、贈与税の申告書を提出する(FAQ2-4)。

④ 相続時精算課税の適用を受けるため贈与者の住民票の写しを添付する場合、贈与者のマイナンバーが記載されていてもよいか

贈与者の住民票の写しの添付に当たっては、マイナンバーが記載されていないものを添付する。

なお、マイナンバーが記載された贈与者の住民票の写しを添付する場合には、マイナンバーをマスキングするなどの対応が必要になる(FAQ2-5)。

⑤ 贈与税の申告書付表には複数の相続人等が同一の書面にマイナンバーを記載することになるが、例えば、一人目の相続人等が自らのマイナンバーを贈与税の申告書付表に記載して二人目の相続人等に渡す行為は、番号法上の「特定個人情報の提供」に該当するか

贈与税の申告書付表の作成に当たり、複数の相続人等がそれぞれのマイナンバーを記載するために、一の相続人等が贈与税の申告書付表にマイナンバーを記載してその他の相続人等に渡す行為は、番号法上の特定個人情報の提供には該当しない。

また、相続人等の間での本人確認は不要である。

なお、マイナンバーを記載した贈与税の申告書付表を税務署に提出する際は、各相続人等の本人確認書類の写しを添付する必要がある(各相続人等のうち税務署の窓口で贈与税の申告書付表を提出する者は、本人確認書類の写しの添付に代えて、本人確認書類を提示してもよい)(FAQ2-6)。

⑥ 贈与税の申告書に法人番号を記載する必要があるのはどのような場合か

例えば、人格のない社団又は財団が財産を取得した場合で、当該社団又は財団が法人番号の指定・通知を受けているときに、法人番号の記載が必要になる(FAQ2-7)。

⑦ 教育資金非課税申告書や結婚・子育て資金非課税申告書などの申告書を金融機関に提出する場合にはマイナンバーの記載が必要か

教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の特例の適用を受けるため、当該申告書を金融機関に提出する場合は、マイナンバーの記載が必要になる(FAQ2-8)。

⑧ 教育資金非課税申告書や結婚・子育て資金非課税申告書などの申告書を金融機関へ提出する際に本人確認書類の提示は必要か

本人確認は、金融機関において行うことになるため、金融機関へ提出する際に本人確認書類の提示等が必要になる(FAQ2-9)。

2016/09/14著者 :  中島孝一

2015年7月29日 (水)

勤め先等から受け取った弔慰金では相続税に注意!

  2013年度税制改正に伴い、相続税は、今年1月から基礎控除の引下げなどの課税強化が実施されており、できるだけ課税対象額を少なくしたいところだ。ところで、被相続人の死亡によって執り行う葬儀等の際に受け取る御霊前や御仏前といった「弔慰金」や「花輪代」、「葬祭料」などは、周知のとおり、通常相続税の対象にならないこととされている。ただし、これはあくまで通常の場合の話である。
 

例えば、被相続人の勤め先等の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分は相続税の対象となる。これ以外の部分は、被相続人の死亡が、(1)業務上の死亡であるときは、被相続人の死亡当時の普通給与の3年分相当額 、(2)業務上の死亡でないときは、被相続人の死亡当時の普通給与の半年分(6ヵ月分)相当額が、「弔慰金に相当する金額」として非課税となる。

 

これを超えた場合は、その部分に相当する金額が退職手当金等として相続税の課税対象となるので、注意したい。 つまり、弔慰金等として取り扱われたものの中に、社会通念上相当と認められる額を超える部分があるとすれば、本来その部分は退職手当金等に該当するものとして取り扱うべきものであり、上記の弔慰金等として取り扱ったものについては、社会通念上相当と認められる範囲内のものであると考えられている。

 

ちなみに、相続が発生した場合には、本来の退職金とは別に「弔慰金」が支給される場合があるが、この弔慰金等には上記のように非課税枠があるので有効活用ができる。例えば、被相続人の役員報酬が150万円/月(賞与を除く)で、死亡原因が非業務上のケースで、死亡退職金6000万円で弔慰金がゼロの場合は、当然ながら死亡退職金6000万円全額が課税対象となる(便宜上、退職金の非課税枠については考慮していない)。

 

しかし、死亡退職金5000万円と弔慰金1000万円に分けてもらった場合は、弔慰金の非課税枠が「150万円×6ヵ月=900万円」があり、退職金としての課税対象額は「1000万円-900万円=100万円」となり、死亡退職金5000万円+100万円の計5100万円が課税対象となる。このように、「退職金」だけでもらう場合と「退職金と弔慰金」に分けてもらう場合とでは、相続財産としての課税対象が900万円も違ってくるので、有効活用したい。

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2015年4月28日 (火)

賃貸アパートなど収益物件を贈与した場合の注意点!

本年1月から相続税が大増税となったことで、改めて生前贈与での節税・相続対策が注目されている。その一つに、賃貸アパート(建物)などの収益物件を生前贈与するものがある。収益物件を贈与することで、贈与後の賃貸収入は子供のものになるので、父親の相続財産の増加を防ぐ効果があり、それに賃貸収入分をきちんと貯めておけば、後々の相続税納税資金に活用できる。ただし、借入金や預り敷金があるケースでは注意が必要となる。

贈与する賃貸アパートに、銀行等金融機関からの借入金が残っている場合がある。贈与税を計算する上での贈与財産の評価額は、一般的には「相続税評価額」となり、賃貸アパートの建物であれば、通常の取引価格(時価)よりも大分下がる。しかし、借入金が残っている状態で賃貸アパートを贈与すると「負担付贈与」となってしまい、この場合の賃貸アパートの評価額は、「相続税評価額」ではなく「通常の取引価額」で評価することになる。

つまり、評価額が高くなり、贈与税の負担が重くなる。同様に、預り敷金があるケースも要注意となる。敷金は、契約終了後は賃借人に未払がない限り返還されるものだ。建物の所有者が変わり、預り敷金の引継ぎがなかったとしても新所有者は当然に預り敷金を引き継ぐものとされている。そうすると、新所有者は建物という財産の贈与を受けると同時に、預り敷金の返還義務も引き継ぐことになる。これは法形式上、「負担付贈与」に該当する。

負担付贈与となると、相続税評価額ではなく通常の取引価格(時価)で評価することになり、また、贈与した父親にも譲渡所得が課税される可能性もある。ただし、建物の贈与と同時に預り敷金に相当する現金も同時に贈与すれば、預り敷金返還義務を承継させ(す)る意図が贈与者・受贈者間にないことになり、実質的に負担付贈与にはならないと取り扱うことができる。この場合は、譲渡の対価がないので親に対して譲渡所得に係る課税は生じない。

なお、賃貸アパートの贈与というと負担税額の大きさを懸念する向きもあるが、相続時精算課税制度を使えば2500万円の特別控除があるので、負担は大きくならない。同制度は、60歳以上の親から20歳以上の子への贈与の場合、贈与財産の価額から2500万円を限度とした特別控除額を控除した金額で贈与税を計算し、実際に相続が発生したときにその贈与財産を相続財産に合算して相続税額を計算するという制度である。

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2014年9月 9日 (火)

相続時精算課税は得か??

1 相続時精算課税の現状
                               

相続時精算課税方式は平成15年から適用されています。一般の贈与税課税方式(暦年課税といいます。)に変えて、贈与者及び受贈者等一定の要件に適合すれ ば、相続時精算課税方式を選択適用することができます。特別控除額が2,500万円と高額なこともあり人気は高いようです。贈与税の申告件数を見ても約1 割が相続時精算課税です。相続時精算課税の申告は数年に亘ってできるため、適用純人員が増加しているかどうかまではわかりませんが、それでも定着した制度 であることは間違いがないようです。

                               

2 相続時精算課税の適用要件

                               

相続時精算課税制度のおさらいをします。

                               
                                 

○ 贈与者(以後「特定贈与者」といいます。)の要件 

                                 
<1> 贈与した年の1月1日において65歳以上であること                                      
(平成27年1月1日以後の贈与の場合、60歳以上であること)
                                      <2> 贈与した時に受贈者の親であること
                                     

○ 受贈者の要件

                                     
<1> 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
<2> 贈与を受けた時に贈与者の子(直系卑属である推定相続人)であること                                            
(平成27年1月1日以後の贈与の場合、孫も含まれる)
                                          
                                          

○ 申告要件

                                          
<1> 贈与税の提出期限内に贈与税の申告書を提出すること
<2> 「相続時精算課税選択届出書」を提出すること
<3> その他戸籍謄本等必要な書類を添付すること
                                             
                                             

3 相続時精算課税のリスク

                                             

特別控除2,500万円と高額であるため、比較的人気のある制度ですが、適用にあたって十分検討しなければいけないことも多くあります。相続時精算という 言葉通り、贈与者に相続が開始した時に精算する制度であるため、相続の時に受贈財産や手続きがどのようになるかを知っておかないと、こんなはずではなかっ たという場面に出くわすことにもなりかねません。考えられるリスクをあげてみましょう。

                                             
                                                

(1) 相続時精算課税の適用を受けた財産はすべて相続財産として加算される

                                                
                                                 

相続時精算課税を選択した場合、選択した年分以降の贈与財産は全て相続財産として加算されます。

                                                 

暦年課税の場合、相続開始3年以内の贈与財産のみ加算であるためこの点が大きく異なります。十分に検討に値します。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法21の15①:相続税の課税価格への加算の対象となる財産】

                                                

法第21条の15第1項の規定による相続税の課税価格への加算の対象となる財産は、被相続人である特定贈与者からの贈与により取得した財産(相続時精算課 税選択届出書の提出に係る財産の贈与を受けた年以後の年に贈与により取得した財産に限る(当該相続時精算課税選択届出書の提出に係る年の中途において特定 贈与者の推定相続人となったときには、推定相続人となった時前に当該特定贈与者からの贈与により取得した財産を除く。)。)のうち、法第21条の3及び第 21条の4に規定する非課税財産以外の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるすべてのものであり、贈与税が課されているかどうかを問わないのであるから 留意する。

                                             
                                             
                                                

(2) 特別控除額を超えた場合、少額贈与でも贈与税が課税される

                                                
                                                 

相続時精算課税制度を適用し特別控除額2,500万円を超えた場合、贈与税額は一律20%です。特別控除額2,500万円を超えた年分以後の年分は基礎控 除以下の贈与であっても、申告して20%の贈与税を納めなければならなりません。100万円でも5万円でも特定贈与者から1年間に贈与があった場合、どん なに少額でも申告と納税が必要です。相続時精算課税の特別控除2,500万円を適用した翌年から110万円の基礎控除を適用して贈与をしている事例を見か けますが、このようなおいしい話はありません。結局相続財産に110万円×年数×受贈者数を加算しなければならないし、過去に遡って贈与税の申告と納税を しなければなりません。時効にかかるまでの年分となりますが、贈与税の時効は6年であることも留意してください。もちろん無申告加算税と延滞税がかかりま す。納めた税額は相続税額から控除できますが、無申告加算税と延滞税はどこからも控除することができません。

                                                 

暦年課税に戻ることができないことに留意します。

                                                
                                             
                                             
                                                

相続時精算課税を選択した場合の少額贈与についての贈与税の申告の要否

                                                

【照会要旨】

                                                

相続時精算課税を選択した場合には、特定贈与者から、暦年課税に係る贈与税の基礎控除額(110万円)以下の贈与を受けた場合であっても贈与税の申告は必要ですか。

                                                

【回答要旨】

                                                

相続時精算課税をいったん選択した場合の特定贈与者からの贈与については、暦年課税に係る贈与税の基礎控除の適用を受けることはできませんので、「相続時 精算課税選択届出書」を提出した年分以降、特定贈与者からの贈与により取得した財産については、その金額の多寡にかかわらず、すべて贈与税の申告をしなけ ればなりません。

                                                

なお、贈与税の期限内申告書の提出がない場合には、相続時精算課税の特別控除の適用を受けることはできません。

                                                

また、将来の特定贈与者の死亡に係る相続税の計算において、相続時精算課税の選択後における特定贈与者から贈与を受けた財産については、贈与税の申告の有無にかかわらず相続時精算課税適用者の相続税の課税価格に算入されることとなります。

                                                

(国税庁ホームページ:質疑応答事例より)

                                             
                                             
                                                

(3) 財産の価額が下降した場合

                                                
                                                 

価額が将来変動するような受贈財産の場合、その価額が下落することも考慮する必要があります。相続財産に加算される価額は受贈時の価額です(相法21の 15)。贈与者が死亡するまで長い期間の場合、価額変動リスクも考慮しなければなりません。特に平成27年1月1日以後の贈与は、特定贈与者の年齢が60 歳まで下がります。日本人男性の平均寿命は79.59歳です(厚生労働省資料)。単純に言うと、相続開始まで15年であったものが20年に延びるともいえ ます。

                                                
                                                

(4) 受贈財産を費消した場合

                                                
                                                 

相続開始の時までにその受贈財産を費消していたとしても相続財産には贈与時点での金額が加算されます。例えば金銭の贈与を受け、受贈直後に費消してしまっ た場合、贈与者の相続の時に受贈金額を相続財産に加算してそれに対応する相続税を支払わなければなりません。雲散霧消した財産に対し、数十年後に相続税が 課税された時の相続人の反応も慮る必要があるでしょう。

                                                
                                                

(5) 受贈財産は物納財産となりません

                                                
                                                 

生前に特定の子に財産を継がせるため、非上場株式や土地等を、相続時精算課税を適用して贈与税の申告をした場合、特定贈与者に相続開始があって、主たる相 続財産が相続財産に加算した相続時精算課税適用財産である不動産もしくは非上場株式のような換金困難資産であるときは相続税の納税資金に窮することになり ます。相続税を支払うことができない場合は相続財産の物納制度がありますが、相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産は物納財産となりません(相法 41②)。

                                                 

暦年課税の贈与の場合、相続開始前3年以内の規定に該当し、贈与財産価額を相続税の課税価格に加算した場合、その贈与財産は物納対象財産となります(相基通41-5)。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法41②:物納の要件】

                                                

2 前項の規定による物納に充てることができる財産は、納税義務者の課税価格計算の基礎となった財産(当該財産により取得した財産を含み、第21条の9第3項 (相続時精算課税の選択)の規定の適用を受ける財産を除く。)でこの法律の施行地にあるもののうち次に掲げるもの(管理又は処分をするのに不適格なものと して政令で定めるもの(第45条第1項において「管理処分不適格財産」という。)を除く。)とする。

                                                

(法第19条の規定の適用がある贈与財産による物納)

                                                

【相基通41-5:法第19条の規定の適用がある贈与財産による物納)

                                                

法第41条第2項に規定する「課税価格計算の基礎となった財産」には、相続又は遺贈によって財産を取得した者が当該相続に係る被相続人から贈与により取得 した財産で、その価額が法第19条の規定により当該相続に係る相続税の課税価格に加算されたものを含むのであるから留意する。

                                             
                                             
                                                

(6) 贈与財産には小規模宅地等の特例の適用ができない

                                                
                                                 

相続時精算課税及び暦年課税適用の贈与を受けた土地等を相続財産に加算する場合、その土地等が小規模宅地等の特例に該当する宅地であっても特例の適用はできません(措通69の4-1)。

                                                 

例えば、老後の面倒を長男にみてもらうため、自宅土地建物を長男に贈与することがあります。このような場合相続税のことを検討しないと、贈与した場合に相続税の課税対象となることがあります。

                                                 

総財産価額75,000千円で相続人は配偶者及び子2名の場合を検討します。同居している長男に居住用土地25,000千円を贈与し、長男は相続時精算課税を適用して贈与税の申告をしました。

                                                 

相続税の基礎控除額 80,000千円(50,000千円+10,000千円×3人)

                                                 

○ 相続税の課税遺産総額は下記のように20,000万円です。

                                                 
                                                   

75,000千円+25,000千円(贈与財産)=100,000千円

                                                   

課税遺産総額

                                                   

100,000千円-80,000千円(基礎控除額)=20,000千円

                                                 
                                                 

○ もし自宅を贈与していなかった場合、自宅は小規模宅地等の特例の適用を受けることができ、課税遺産総額は次のとおり零となり、相続税は課税されません。

                                                 
                                                   

75,000千円+(25,000千円-(25,000千円×0.8))=80,000千円

                                                   

課税遺産総額

                                                   

80,000千円-80,000千円(基礎控除額)=0

                                                 
                                                
                                             
                                             
                                                

【措通69の4-1:相続開始前3年以内の贈与財産及び相続時精算課税の適用を受ける財産】

                                                

措置法第69条の4第1項に規定する特例対象宅地等(以下69の5-11までにおいて「特例対象宅地等」という。)には、被相続人から贈与(贈与をした者 の死亡により効力を生ずべき贈与(以下「死因贈与」という。)を除く。以下同じ。)により取得したものは含まれないため、相続税法(昭和25年法律第73 号)第19条((相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額))の規定の適用を受ける財産及び相続時精算課税(同法第21条の9第3項((相続時精 算課税の選択))の規定(措置法第70条の3第1項において準用する場合を含む。)をいう。以下70の7の2-3までにおいて同じ。)の適用を受ける財産 については、措置法第69条の4第1項の規定の適用はないことに留意する。

                                             
                                             
                                                

(7) 相続が開始した場合の異なる対応

                                                
                                                 

贈与を受けた財産を贈与税の申告をするに際して暦年課税で申告するか相続時精算課税で申告するかは受贈者の自由です。ただし、特定贈与者に相続開始があっ た場合、贈与税の申告方法によって相続財産に加算されるか否か異なります。例えば長男と次男に2,500万円ずつを贈与し、長男は相続時精算課税を選択し 次男は暦年課税で申告し、次男は970万円の贈与税を納付しました。3年以上経過し、特定贈与者である父親が死亡しました。この場合、父親の相続財産の価 額には長男が贈与を受けた2,500万円が加算され相続税の計算が行われます。加算しなかった場合に比して相続税額が増加します。当然次男にも影響が及ぶ ため、暦年課税で申告した二男から不満が出ることになります。ここまで考えて指導することも必要です。

                                                
                                                

(8) 遺留分を侵害する場合がある

                                                
                                                 

特定贈与者の相続財産の構成によっては相続人の遺留分を侵害することもあります。相続時点で財産が少ない場合であっても特別受益となり受贈財産の相続時点での価額を加算して計算するため受贈者以外の相続人の遺留分を侵害することも十分あり得ます。

                                                
                                                

(9) 特定贈与者の財産がゼロでも相続税の対象となる場合がある。

                                                
                                                 

特定贈与者が相続時精算課税を適用して子らに贈与し、相続税の基礎控除以内にまで財産価額を減額させたため相続税がかからないと誤解している場合があります。相続時精算課税適用財産は相続財産に全額加算されます。

                                                 

また、特定贈与者が全財産7,500万円を子3人に2,500万円ずつ贈与し、相続税も贈与税もかからず財産の承継が済んだと思っていても、相続税の改正 により基礎控除額が4,800万円まで下がると相続税が課税されます。10年20年先の相続税の改正を見通すことはできませんが、相続が開始する時まで宿 題を引きずっていく課税方式であることに留意します。

                                                
                                                

(10) 孫は相続税の納税義務者となる

                                                
                                                 

孫が相続時精算課税制度の適用を受け、贈与者(祖父)に相続開始があった場合、孫は相続税の納税義務者になります。相続財産を多数の子や孫に相続時精算課 税を適用して贈与している場合、特定贈与者に相続があった場合にどれくらいの相続税を負担となるか検討します。その時になってあわてることが予想されま す。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法1の3:相続税の納税義務者】

                                                

次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。

                                                

④ 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9第三項(相続時精算課税の選択)の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前3号に掲げる者を除く。)

                                             
                                             
                                                

(11) 孫の相続税は2割加算となる

                                                
                                                 

孫が相続時精算課税を適用して贈与を申告し、その後特定贈与者(祖父又は祖母)に相続が開始し相続税の負担が生じた場合、孫は被相続人の一親等の血族ではないため相続税額の2割を加算して納税しなければなりません(相法18)。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法18:相続税額の加算】

                                                

相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失っ たため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわ らず、同条の規定により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額とする。

                                             
                                             
                                                

(12) 特定贈与者の相続時の孫の納税資金も検討が必要となる

                                                
                                                 

相続時精算課税の適用を受けて贈与を受けた孫は相続税の納税義務者ですが、相続人ではないため、遺産分割により相続財産を取得することができません。受贈 財産をそのまま所有している場合は別ですが、20年もたってしまうと財産を費消していることもあります。むしろ使わなければ何のために贈与を受けたのかわ かりません。特定贈与者が相続税の対象となるのか、相続税がかかるとしたらいくらくらいになるのか、孫に納税資金があるのかという将来を見据えた検討が必 要です。

                                                
                                                

(13) 受贈者が先に死亡した場合の検討も必要である

                                                
                                                 

死亡する順番は予測できません。受贈者が先に死亡することも十分にあり得ます。むしろ高齢化が進む近年では贈与者が高齢であると同時に受贈者も高齢化して います。受贈者が先に死亡した場合、相続時精算課税の権利義務は、その受贈者の相続人が本来この受贈者が有していた相続時精算課税の規定に関する権利や義 務を承継します。

                                                 

その後特定贈与者に相続開始があった場合に、この特定受贈者の相続人は、特定贈与者の相続財産に相続時精算課税適用財産を加算しなければなりません。相続 時精算課税適用者の相続人が2人以上いる場合、その相続人の承継は民法900条から902条に規定する割合で案分します。相続時精算課税適用者が死亡して その相続人が配偶者と子供一人であれば、相続財産のうち受贈財産のすべてを遺産分割協議によって配偶者が取得していたとした場合でも相続割合は配偶者 1/2、子1/2です。

                                                 

次図の相続関係で説明します。

                                                 

BはAから贈与された財産について、相続時精算課税を適用して申告しました。しかし、Bが死亡し、その数年後にAが死亡しました。この時、Bが死亡してい ますので、相続人は代襲相続人であるDです。しかし、Bが取得した贈与財産は相続時精算課税の適用を受けていますので、Aの相続財産に相続時精算課税適用 財産が加算されます。その権利義務(申告し納税又は還付を受ける権利義務)はBの相続人が承継します。この場合、CとDが法定相続分各1/2で権利義務を 負うことになります。CはAの相続人ではありませんが、この場合に限ってAの相続時精算課税適用財産に対応する相続税の納税義務を負います。Cにとっては とばっちりみたいなものですが、贈与税が還付の場合も当然法定相続分で還付請求できます。

                                                 

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法21の17:相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等】

                                                

特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、当該相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。以下この条 及び次条において同じ。)は、当該相続時精算課税適用者が有していたこの節の規定の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。ただ し、当該相続人のうちに当該特定贈与者がある場合には、当該特定贈与者は、当該納税に係る権利又は義務については、これを承継しない。

                                                

3 国税通則法第5条第二項 及び第三項 (相続による国税の納付義務の承継)の規定は、この条の規定により相続時精算課税適用者の相続人が有することとなる第一項の納税に係る権利又は義務について、準用する。

                                                

【通則法5:相続による国税の納付義務の承継】

                                                

相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた場合には、相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)又は民法 (明治29年法律第89号)第951条 (相続財産法人の成立)の法人は、その被相続人(包括遺贈者を含む。以下同じ。)に課されるべき、又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税 (その滞納処分費を含む。第2章(国税の納付義務の確定)、第3章第1節(国税の納付)、第6章(附帯税)及び第7章第1節(国税の更正、決定等の期間制 限)を除き、以下同じ。)を納める義務を承継する。この場合において、相続人が限定承認をしたときは、その相続人は、相続によって得た財産の限度において のみその国税を納付する責めに任ずる。

                                                

2 前項前段の場合において、相続人が2人以上あるときは、各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は、同項の国税の額を民法第900条 から第902条 まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする。

                                             
                                             
                                                

(14) 相続税が2度課税される?

                                                
                                                 

相続時精算課税適用者が先に死亡した場合、受贈財産は2回課税されることになります。上記(13)の例を見てみましょう。Bの死亡によりBの相続財産の中 に受贈財産(現金預貯金又は不動産)があります。これはBの財産ですから相続税の課税対象となります。相続人はC及びDです。次にAが死亡した場合、受贈 財産の価額がAの相続財産に加算されてAの相続税の計算が行われます。一粒で二度まずい飴を食べるようなものです。

                                                
                                                

(15) 相続時精算課税を選択したら暦年課税に戻ることはできない

                                                
                                                 

相続時精算課税を選択して、後日、やはり暦年課税の方がよかったといってキャンセルすることはできません。選択する場合、将来の損得を十分に検討した上での覚悟が必要です。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法21の9:相続時精算課税の選択】

                                                

贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年1月1日において20歳以上であるものに限 る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において65歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、こ の節の規定の適用を受けることができる。

                                                

2 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第28条第1項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与によ り取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならな い。

                                                

相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない。

                                             
                                             
                                                

(16) 2,500万円は非課税金額か?

                                                
                                                 

相続時精算課税適用は、特定の子に贈与した事実を確定させるためにあるものと考えてもいいでしょう。特別控除2,500万円は、相続財産の計算においては控除されません。つまり、贈与をし、2,500万円の特別控除を適用したとしても、相続の時にはチャラになります。

                                                 

暦年課税と比較してみます。3,000万円を贈与した場合、相続時精算課税を選択すると税額は100万円です。この100万円は特定贈与者の相続の時に全 額相続税額に充当されます。充当しきれなかった金額は還付されます。つまり贈与税額の負担が全くなく贈与できるともいえます。ただし、相続財産に加算する ときは2,500万円も加算するということです。 

                                                 

歴年課税で贈与税の税率が最低限である10%の税率は課税価格200万円までです。基礎控除110万円を適用して年間で310万円の贈与ができます。税額 は20万円です。これが3,000万円に達する年限は約10年です。贈与税額の合計は200万円となります。納めた税額は、相続開始前3年以内に該当して 相続財産に加算した分は相続税に充当されますが、それ以前の分は戻ってきません。しかし、相続開始以前3年以前であれば、この3,000万円は相続財産に 加算する必要はありません。10年間で3000万円もらって、200万円の贈与税で済んだ、と考えれば、それはそれで納得できることではないでしょうか。 基礎控除額の10年分1,100万円は十分に使い切っています。これを20年にあてはめれば2,200万円となり相続時精算課税の特別控除2,500万円 に匹敵します。

                                                
                                                

(17) 相続時精算課税適用者は税務署の管理下に置かれる

                                                
                                                 

暦年課税の贈与は、通常の申告ですから時効期間を経過すればほとんど問題となることはありません。他の税目と同様、申告書等簿書は管理年限の到来と同時に 廃棄されるでしょう。ところが相続時精算課税適用者は、特定贈与者の相続開始の時が問題ですので、その時まで申告書のみならず各種情報ともども厳然と管理 されます。相続開始の時まで10年20年は普通でしょうし、30年40年になるかもしれません。税務署は相続時精算課税対象金額をうやむやのうちに終わら せるということは決してありません。相続が開始したという情報を手に入れた途端、即座に過去の贈与情報をひっぱり出してきて相続税の申告書が提出されるの をじっと待ちます。なぜなら、贈与税の還付請求をするための相続税の申告は相続開始の翌日からできるからです。還付する税務署としては、還付の遅れがある と還付加算金に影響が出ます。その他、贈与税の課税漏れ等の理由もあり、相続時精算課税適用者は常に管理されていると考えて間違いないでしょう。

                                                
                                             
                                             
                                                

【相法27:相続税の申告書】

                                                

3 相続時精算課税適用者は、第1項の規定により申告書を提出すべき場合のほか、第33条の2第1項の規定による還付を受けるため、第21条の9第3項の規定 の適用を受ける財産に係る相続税の課税価格、還付を受ける税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出することができ る。

                                                

【相基通27-8:還付を受けるための申告書の提出期限】

                                                

法第27条第3項に規定する申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができるのであるから留意する。

                                             
                                             

以上説明しましたように相続時精算課税を適用するにあたっては様々なリスクがあります。もちろん利便な点もあります。しかし、2,500万円の特別控除額 だけに惹かれて適用を薦めるのではなく、多くのリスクもあることを知ったうえで薦めることが大切です。相続があって初めてビックリ仰天!とならないように 気を付けてください。

                                             

なお、国税庁が公表している税務統計資料を見ますと高額受贈者ほど暦年課税で申告しているという傾向がみられます。これは、事前に相続時精算課税のリスクを十分に検討した上でのことだと考えられます。

                                             

提供:税経システム研究所

2014年7月23日 (水)

東京地裁 相続人名義の預貯金は相続財産に該当

  相続税の調査で非違が見つかる申告漏れ財産の価額のうち約3~4割は「現金・預貯金等」であり、中でも、被相続人等が管理・運用等していた相続人名義の預貯金が相続財産に該当するか否かが問題になるケースが多いようだ。
                                 

この点、相続税法や通達において、その判定基準や要件は規定されていない。そのため、実務上は、過去の判決で示されたように、預貯金口座の購入原資の出捐 者(しゅつえんしゃ)や口座開設の意思決定・手続を行った者、預貯金口座の管理及び運用の状況(通帳や証書、印鑑の保管場所等)、贈与契約書の有無などを 総合考慮して判定されている。

                                 

この度、相続人名義の預貯金について、被相続人と相続人の間で生前贈与する旨の贈与契約が成立していたか否かを巡り争われた事件で、東京地方裁判所は4月 25日、生前贈与した事実は認められず、相続人名義の預貯金は被相続人の財産に帰属するとして、原告の主張を棄却する旨の判断を行った(平成25年(行 ウ)第104号・係属中)。

                                 

本件は、申告した相続税に係る相続財産のうち原告名義の預貯金については、生前贈与を受けたものであるとして更正の請求を行ったところ、税務当局が更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことで争われたもの。

                                 

争点は、被相続人と原告との間で、原告名義の預貯金について、生前に贈与する旨の贈与契約が成立していたか否かである。

                                 

東京地裁は、原告名義の預貯金口座は、いずれも、被相続人が自らの財産を原資として開設したこと、被相続人は、原告名義の預貯金口座に係る一部の解約金を 自己の口座に入金し、その資金を土地の購入資金に充て被相続人名義で土地を取得したこと、預貯金に係る証書を自ら保管していたことなどの認定事実に加え、 預貯金を贈与する旨の書面が作成されていないことを指摘。被相続人は、相続対策として、毎年、贈与税の非課税限度額内で、原告ら親族の名義で預貯金の預入 れを行っていたものの、預貯金の証書は自ら保管して原告らに交付せず、被相続人自身に具体的な資金需要が生じた際に、必要に応じてこれを解約し、被相続人 自ら使用することを予定していたというべきであるとした。

                                 

よって、被相続人は、預貯金口座の開設時やその後の預入れ当時、その預入金額を原告らに贈与するという確定的な意思があったとまでは認められないとし、被相続人の相続財産に該当すると判断した。

                               
                               

提供:税務研究会・税研情報センター

2013年11月21日 (木)

同族会社株式に対する相続税の納税猶予

★ 同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度とは

同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度は、正式には「非上場株式等についての相続税の納税猶予制度」といい、租税特別措置法第70条の7の2において規定されています。

この制度を一言に要約すると、後継者が相続によって取得した同族会社株式のうち、議決権総数の3分の2に達するまでの株式については、その80%に相当する相続税額が、後継者が死亡する時点まで納税猶予され、かつ、その時点で、猶予された税額の納付が免除される制度です。

言い換えれば、後継者が総議決権の100%に対する株式を持ち続けることを前提にすると、同族会社株式に対する53.3%(※)の相続税額の負担を避けることができ、

※ 2/3×80%=53.3%

後継者が総議決権の3分の2の株式を保有し続けることを前提にすると、同族会社株式に対する80%の相続税額の負担を避けることができます。

★ 適用例が少なかった理由

この制度は、平成21年度税制改正によって設けられ、平成20年10月1日以後に開始した相続に遡って適用されたもので、すでに5年が経過しているのですが、平成24年現在での適用総数は360件程度と非常に低く、この制度とともに設けられた贈与税の納税猶予制度に至っては170件弱に留まっているという状況でした。

その理由は、主に次のようなことが考えられます。

イ あらかじめ、先代経営者が相続開始前に経済産業局に出向いて、この制度を利用するための事前確認の手続を受けておかなければならないこと。

ロ この手続を受けてから5年間は、従業員数の8割以上を雇用し続けなければならないこと。

ハ 納税猶予の担保のために、その同族会社の株式を現物で提供しなければならず、株式を発行しない会社であっても、定款を株式発行会社に変更した上で、実際に株式を発行しなければならないこと。

ニ もし、延納の条件を満たさなくなった場合には、破産などの特別な場合を除き、2か月以内に利子税を含めて猶予税額を全額納付しなければならないこと。

ホ この制度に関係する省庁が経済産業省と財務省であるため、経済産業局と税務署とに同様の書類を提出して手続を行わなければならず煩雑であること。

★ 平成25年度税制による変更点

平成25年度税制改正によって、「使い勝手」がよくなるように、適用要件が次のように大幅に見直されました。

イ 従業員数の8割以上を5年間雇用し続ける要件を、5年間の平均で8割以上確保しなければならない要件に改められ、平均としての8割を欠いた場合でも、その下回った割合に応じた税額を納付するように改められる。

ロ 親族以外の従業員を後継者にした場合も、適用が可能になる。

ハ 納税猶予期間中における利子税率が2.1%から0.9%に引き下げられ、納税猶予期間が5年を超える場合には、当初の5年分に対する利子税が免除される。

ニ 民事再生計画等に基づいて事業を再出発させる場合は、猶予税額を再評価し、猶予税額の一部が免除される。

ホ 経済産業局と税務署に提出する資料の重複が排除される。

ヘ 株券不発行会社は、株式を発行していなくても担保提供が可能になる。

 納税猶予が取り消された場合で所定の場合には、延納または物納の適用が可能になる。

チ あらかじめ、先代経営者が相続開始前に経済産業局で行っておく事前確認の手続が不要とされた。

これらの変更点のうち、イ~トは平成27年1月1日以後に相続または遺贈によって取得する株式に適用されますが、チの事前確認制度はすでに平成25年4月1日以後に認定を受ける会社から廃止されています。

★ 事前確認制度の廃止によって生じる税理士事務所の責任

事前確認制度は、先代経営者があらかじめ生前に経済産業局で行っておく必要がありました。

つまり、先代経営者が自ら事前確認を受けていなかった場合には、そもそも納税猶予制度が適用できませんから、相続開始後に、この制度の適用を受けるかどうかを選択する余地はなかったわけです。

ところが事前確認制度が廃止されたことによって、納税猶予制度は誰でも要件を満たせば適用できるようになり、相続開始後に適用を受けるかどうかを選択できるようになりました。

しかしながら、この制度は他の制度と異なって、申告期限までに経済産業局と税務署とで次の処理をしておくことが必要です。

イ 相続開始後8か月以内に経済産業局で認定の手続を行い、認定を受けること。

ロ 相続税の申告書の提出期限までに、税務署で担保提供の手続を行うこと。

また、この制度は相続税の申告書を提出期限内に提出しなければなりません。

経済産業局での申請は、相続認定申請基準日が相続開始日から5か月を経過する日とされていますし、認定を受けないと相続税の期限内申告もできませんので、おおむね、次のように処理を進めていくことになると考えられます。

相続開始日

↓ 猶予額の概算を算出し、猶予を受けるかどうかを依頼者に確認する。

5か月目

↓ 経済産業局での認定手続

8か月目

↓ 税務署での担保提供手続

10か月目相続税の期限内申告

このなかで最も重要なのは、最初の段階での、納税猶予制度の適用を受けるかどうかの依頼者に対する確認でしょう。

ここでの確認が後手後手になったり、確認を怠ったりすると、後のスケジュールが非常に厳しくなりますし、本来の相続税の申告事務が最も集中する時期に重なりますので、非常にタイトな状況になると思われます。

同族会社株式に対する相続税の納税猶予制度は、適用を受けるかどうかによる期限内納付額への影響が大きいため、依頼者の関心も高いと思われます。

そのことを考慮すると、本年4月から先行して実施された事前確認手続の廃止は、税理士事務所にとって見過ごすことのできない改正であると考えられます。

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このジローの大学ノートについて

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    新しい税法とか、忘れがちなこととか、何度も確認したいことを記載しています。ビギナーの方にも分かるように説明できることを心がけているつもりです。 自分のノート代わりですので、正確な情報ではない場合もあるかもしれません。説明不足のところがあったり、正確でないところがあったらご指摘くだされば幸いです。

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